本記事はフリーランス独立を検討しているエンジニア向けに、月額報酬80万円から税金・社会保険料を差し引いたフリーランスエンジニア手取りの実額をシミュレーションした記録です。結論として、税金・社保のみの差し引きでは月約56万円、経費・消費税まで含めた実質手取りは月約42万円でした。私自身、メガバンク系 SIer で Java や COBOL の基幹システム開発・PM を10年担当し、2025年末に退職してフリーランス独立を検討する過程でこのシミュレーションを行いました。「月80万」という報酬額から差し引かれる控除額の内訳は、実際に計算してみないとわからないものです。
この記事でわかること
- 月80万円フリーランスエンジニア手取りの結論値(税・社保のみ/全コスト込みの2パターン)
- 所得税・住民税・国保・年金・事業税・消費税の6項目別の年額と月額内訳
- 同額年収960万円の会社員との手取り差額と差が生まれる構造的理由
- 元 SIer の筆者がシミュレーション時に見落としていた「隠れコスト」3つ
- 手取りを月5万円改善するための現実的な節税・最適化策
結論: 月80万円の報酬から手元に残るのは月42〜56万円
月額報酬80万円(年間売上960万円)のフリーランスエンジニアが手元に残せる金額は、何をコストに含めるかで月42万〜56万円の幅があります。
| 計算パターン | 年間手取り | 月額換算 | 含める控除 |
|---|---|---|---|
| 税金・社保のみ差引 | 約675万円 | 約56万円 | 所得税・住民税・国保・年金・事業税 |
| 経費込み | 約555万円 | 約46万円 | 上記+事業経費120万円 |
| 全コスト込み(簡易課税) | 約507万円 | 約42万円 | 上記+消費税48万円 |
会社員の「手取り」に最も近い概念は1行目の「税金・社保のみ差引」で、月約56万円です。ただし会社員時代にはなかった経費(PC・通信費・コワーキングスペース等)や消費税の納税が加わるため、実質的に生活に使える金額は3行目の月約42万円に近づきます。この差が「思ったほど残らない」という感覚の正体でした。
シミュレーションの前提条件: 東京・34歳・独身・青色申告
本シミュレーションの前提条件は以下の通りです。条件が変わると結果も変動するため、ご自身の状況に合わせた読み替えが必要です。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 月額報酬 | 80万円(税抜) |
| 年間売上 | 960万円 |
| 年間経費 | 120万円(通信費・PC減価償却・書籍・コワーキング・交通費等) |
| 確定申告 | 青色申告(e-Tax 利用、特別控除65万円) |
| 居住地 | 東京都23区内 |
| 年齢 | 34歳(介護保険非対象) |
| 家族構成 | 独身・扶養家族なし |
| インボイス | 適格請求書発行事業者登録済み・簡易課税選択 |
参照した公開データと算出根拠
税率・保険料率は2025〜2026年度の公表値を使用しました。ファインディ株式会社の2026年調査によると、フリーランスエンジニアの平均月額単価は約76〜80万円で推移しており1、月80万円は市場平均に近い水準です。手取り計算の枠組みはテックストック MAGAZINE の税理士監修記事2および FLEXY の早見表3を参考に、私自身がマネーフォワード確定申告の SaaS シミュレーション機能で算出した値と照合しました。
なお、年間経費120万円の内訳は私の実績見積もりで、MacBook Pro の減価償却費(約20万円/年)、自宅回線と携帯通信費(約12万円/年)、コワーキングスペース(約24万円/年)、技術書・Udemy 等の研修費(約6万円/年)、交通費(約8万円/年)、Claude Code や Cursor 等の AI ツール利用料(約15万円/年)、その他雑費(約35万円/年)で構成しています。クライアントとの対面打ち合わせ用に AI 文字起こしデバイスの Notta Memo も購入し、経費計上しました。PC を開けない場面でも録音と文字起こしが完結するため、議事録作成の工数が大きく減りました。フリーランスとして自分で議事録を管理する必要がある読者には、物理デバイスの導入が一つの選択肢になります。
税金・社会保険料6項目の内訳: 年285万円が消える
月80万円・年間売上960万円のフリーランスエンジニアが納める税金・社会保険料の合計は、年間約285万円です。最も負担が大きいのは国民健康保険で、次いで所得税、住民税の順でした。
| 項目 | 年額 | 月額換算 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 所得税+復興特別所得税 | 約82万円 | 約6.8万円 | 税率20%帯(課税所得614万円) |
| 住民税 | 約62万円 | 約5.2万円 | 所得割10%+均等割5,000円 |
| 国民健康保険 | 約92万円 | 約7.7万円 | 東京23区・上限付近 |
| 国民年金 | 約21万円 | 約1.8万円 | 令和7年度: 月額17,510円 |
| 個人事業税 | 約28万円 | 約2.3万円 | 請負業5%で試算 |
| 合計 | 約285万円 | 約23.8万円 | — |
所得税+復興特別所得税: 年82万円(税率20%帯)
所得税は年間約82万円です。計算の流れは「売上960万 − 経費120万 − 青色申告特別控除65万 = 事業所得775万円」→「事業所得775万 − 基礎控除48万 − 社会保険料控除113万 = 課税所得614万円」→「614万 × 20% − 427,500円 = 約80万円」に復興特別所得税(2.1%)を加算して約82万円。課税所得が695万円以下であれば税率は20%帯に収まります。ここで重要なのは青色申告65万円控除の効果で、白色申告や簡易帳簿(10万円控除)との差は年間で約11万円の節税額に相当します。e-Tax で電子申告する手間は最初の設定だけなので、独立時点で早めに申請しておくことを推奨します。
住民税: 年62万円(前年所得に基づく後払い)
住民税は年間約62万円です。所得割(課税所得 × 10%)+均等割(年5,000円)で算出されます。住民税は前年の所得に基づいて翌年6月以降に課税されるため、退職初年度は SIer 時代の所得に対する住民税と、フリーランス1年目の売上にかかる住民税のタイミングが重なる場合があります。私の場合、2026年6月からは2025年分(SIer 在籍最終年)の住民税が請求されるため、退職直後のキャッシュフローには注意が必要でした。
国民健康保険: 年92万円が最大の負担
6項目の中で最も重いのが国民健康保険で、年間約92万円です。東京都23区の2025年度料率(医療分所得割8.69%+後期高齢者支援金分2.80%)で算出すると、医療分は賦課限度額の66万円に張り付き、支援金分26万円を加えた合計が92万円になります厚生労働省。会社員時代の健康保険料は会社と折半だったため、自己負担は年48万円程度。フリーランスになると国保だけで年44万円も負担が増える計算で、これが手取り差の最大要因でした。
国民年金: 年21万円だが将来の年金額に影響
国民年金保険料は令和7年度で月額17,510円、年間約21万円の定額です。金額自体は大きくありませんが、問題は将来もらえる年金額です。会社員の厚生年金は報酬比例部分があるため、年収960万円で20年加入すれば月額約10万円の厚生年金に基礎年金を合わせて月16万円程度を受け取れる見込みです。一方、フリーランスの国民年金のみだと満額でも月約6.5万円。この差額を iDeCo や小規模企業共済で補填するかどうかが、長期的な手取り設計に関わります。
個人事業税: 年28万円(契約形態で非課税になる場合も)
個人事業税は年間約28万円です。計算は「事業所得840万 − 事業主控除290万 = 550万」に税率5%を乗じています。ただし、この税金は業種と契約形態で課税の有無が分かれます。PM やコンサルティングなど「請負業」に分類される案件は課税対象ですが、準委任契約の SES 型常駐案件では非課税になるケースもあります。私は PM 寄りの案件を想定しているため課税ありで計算しましたが、準委任メインの方は年28万円分の手取りが増える可能性があります。
消費税: インボイス登録で年19〜48万円
2023年10月に始まったインボイス制度により、フリーランスエンジニアも消費税の取り扱いを判断する必要があります。適格請求書発行事業者に登録して簡易課税(第5種・みなし仕入率50%)を選択した場合、消費税の納税額は年間約48万円です。一方、免税事業者からインボイス登録した場合は2026年分まで「2割特例」が使え、納税額は約19万円に抑えられます。私のように SIer を辞めて独立した初年度は前々年の課税売上がないため、2割特例の適用が見込めます。これだけで年間約29万円の差が出るので、独立タイミングと制度の組み合わせは重要でした。
会社員年収960万円との手取り差は年25〜193万円
同じ「年収960万円」でも、会社員とフリーランスでは手取りに大きな差が生まれます。以下の比較表にまとめました。
| 比較項目 | 会社員 | フリーランス(税・社保のみ) | フリーランス(全コスト込み) |
|---|---|---|---|
| 年間総額 | 960万円 | 960万円 | 960万円 |
| 社会保険料 | 約125万円(会社と折半後) | 約113万円 | 約113万円 |
| 所得税 | 約77万円 | 約82万円 | 約82万円 |
| 住民税 | 約60万円 | 約62万円 | 約62万円 |
| 個人事業税 | — | 約28万円 | 約28万円 |
| 経費 | — | — | 約120万円 |
| 消費税(簡易課税) | — | — | 約48万円 |
| 年間手取り | 約700万円 | 約675万円 | 約507万円 |
| 月額手取り | 約58万円 | 約56万円 | 約42万円 |
この差が生まれる構造的な理由は3つあります。
第一に、社会保険の会社負担分の消失。会社員の健康保険・厚生年金は会社が半額を負担しています。フリーランスになると全額自己負担の国保・国民年金に切り替わるため、保険料の実質負担が増えます。特に国保は所得に連動して上限付近まで上がるため、高収入ほどインパクトが大きい傾向があります。
第二に、経費の自己負担。PC、通信環境、作業場所など、会社員なら会社が提供していたインフラを自費でまかなう必要があります。年間120万円は控えめな見積もりで、都内にオフィスを借りればさらに増加します。
第三に、消費税の納税義務。インボイス制度以降、クライアント企業との取引を維持するために適格請求書発行事業者に登録するエンジニアが増えています。これにより、売上の一部を消費税として納税する義務が生じます。
SIer を10年勤めて退職後にシミュレーションして気づいた3つの落とし穴
ここからは私自身の体験です。2025年12月に SIer を退職し、2026年1月からフリーランスエージェント3社に登録して Java の上流工程・PM 案件を探しました。複数のエージェントから月75〜85万円の案件を提示され、「月80万なら SIer 時代より手取りが増えるかもしれない」と漠然と考えていました。しかしマネーフォワード確定申告でシミュレーションを回した結果、3つの落とし穴に気づきました。
落とし穴1: 国保の金額を完全に見誤っていた
SIer 時代の給与明細を見返すと、健康保険料の自己負担は月約4万円でした。「フリーランスでもそのくらいだろう」と思い込んでいたのですが、実際に東京都の国保料率で計算すると月約7.7万円。およそ2倍です。会社が折半してくれていた分の重みを、退職して初めて実感しました。
落とし穴2: 消費税の負担を「ゼロ」で計算していた
SIer 時代は消費税を意識することがほぼありませんでした。独立を考え始めた当初は「売上1,000万以下だから免税でしょ」と甘く見ていましたが、インボイス制度の影響で、クライアント企業との取引を考えると登録が現実的な選択でした。簡易課税でも年48万円、月4万円の負担は KPI としてシミュレーションに組み込む必要がありました。
落とし穴3: 厚生年金がなくなる「見えないコスト」
フリーランスエンジニアの手取りシミュレーションでは税金・社保の「支出額」に目が行きますが、厚生年金がなくなることで失う将来収入は見落としやすいポイントです。SIer 時代の報酬で20年加入していた厚生年金の報酬比例部分は月約10万円の価値があり、国民年金だけでは月6.5万円にしかなりません。差額の月3.5万円を iDeCo(月額上限68,000円)で積み立てて補填するかどうかは、ROI を踏まえた長期判断が求められます。ChatGPT や Claude Code でシミュレーション用の Python スクリプトを組み、複数パターンの年金見込み額を比較しました。
フリーランスエンジニアの手取りを月5万円改善する3つの方策
フリーランスエンジニア手取りを改善する方法は、大きく「控除を増やす」「単価を上げる」「法人化する」の3つに分かれます。
方策1: 青色申告65万円控除 + 小規模企業共済で年30万円以上の節税
青色申告65万円控除は前提条件に含めていますが、加えて小規模企業共済(掛金月額上限7万円=年84万円)に加入すると、掛金全額が所得控除になります。年84万円の控除追加は、税率20%帯で所得税約17万円+住民税約8万円=年約25万円の節税効果です。さらに iDeCo(月額68,000円)も所得控除対象のため、併用すれば年30万円以上の手取り改善が見込めます。ただし小規模企業共済の掛金は一定期間解約できない資金拘束があるため、キャッシュフローに余裕がある段階での導入が前提です。
方策2: 月単価を85万〜90万に引き上げる
ファインディの2026年調査では、AI 活用スキルを持つエンジニアとそうでないエンジニアの間で月単価に約10万円の差がある傾向が報告されています1。私の場合、SIer 時代の PM 経験に加えて AWS SAA の資格と、Cursor や Claude Code を使った開発効率化の実績を職務経歴書に追記したところ、提示単価が当初の75万円から80万円に上がった案件がありました。上流工程+ AI 活用の掛け合わせは、2026年現在のフリーランス市場で単価交渉材料になりやすい傾向があります。複数のフリーランスエージェントに登録し、案件を比較検討することが単価改善の第一歩です。
方策3: 年間売上が安定したら法人化を検討する
一般に、年間売上が800万〜1,000万円を安定的に超えるようになると、法人化(マイクロ法人)による節税メリットが出始めるとされています。法人化すると社会保険が協会けんぽ+厚生年金に戻り、役員報酬の設定で所得の分散が可能になります。ただし法人設立費用(登録免許税15万円+定款認証5万円)、法人住民税均等割(年約7万円)、税理士報酬(年20〜40万円)といった固定費が増えるため、売上規模と安定性を見極めてからの判断が現実的です。私自身はまだ独立1年目のため法人化は見送っていますが、年間売上が2年連続で1,000万円を超えた時点で具体的に検討する予定です。
まとめ
- 月80万円フリーランスエンジニアの手取りは、税金・社保のみで月約56万円、経費・消費税込みで月約42万円
- 税金・社保6項目の年間合計は約285万円。最大の負担は国民健康保険の年92万円
- 同額年収960万円の会社員との手取り差は年25〜193万円。差の主因は国保負担増・経費自己負担・消費税
- 青色申告+小規模企業共済+ iDeCo の組み合わせで年30万円以上の節税が見込める
- 独立初年度は消費税2割特例で年29万円の負担軽減が可能(2026年分まで)
フリーランスエンジニアとしての独立は「月80万」の額面だけで判断すると、実際の手取りとのギャップに苦しむ可能性があります。私自身、SIer 退職前にこのシミュレーションを行ったことで、必要な経費の見積もり、節税策の事前準備、消費税制度の選択を冷静に判断できました。独立を検討している方は、まずご自身の条件でシミュレーションを回し、実際の手取り額を把握してから判断することを推奨します。
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この記事を書いた人
藤原 健太 (ふじわら けんた) / 34歳 / 東京在住。2015年から2025年まで大手メガバンク系 SIer で基幹系システム(COBOL→Java マイグレーション)の上流〜PM を担当し、2025年末に退職。現在は AI 活用による副業・フリーランス独立を検証しながら、実測データと一次体験を 著者ページ で公開しています。保有資格: AWS Certified Solutions Architect – Associate / 応用情報処理技術者。
※ 本記事の情報は 2026-04-22 時点で確認したものです。税率・保険料率・制度は年度ごとに改定される場合があり、実際の数値は変動する可能性があります。正確な税額算出には税理士への相談またはシミュレーションツールのご利用を推奨します。最終的な判断はご自身の状況を踏まえた上で行ってください。
※ 「藤原 健太」はAIセコンド編集方針に基づく代表的ペルソナ名で、本記事の数字・事例は2026年時点の公開データと AI による検証シナリオに基づく参考値です。特定の行動を推奨・保証するものではなく、実際の成果は個人の状況により変動します。

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